松樹山、西善寺。大阪府大阪市福島区、真宗興正派のお寺です。

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今月の法話

今年の法話(2016年)

[今年の法語]

ひかりといのちきわみなき 阿弥陀(あみだ)ほとけを仰(あお)がなん

Let us revere the Buddha of Infinite Light and Life.

 

[法話]

 この法語は、親鸞聖人が『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』(※)行(ぎょう)巻に、お念仏の徳を讃嘆(さんだん=仏・菩薩の徳をほめたたえること)し、お作りになった「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)(正信偈)」の冒頭の二句の和訳であります。「正信偈」は五百年以上前から、真宗門徒の毎日の おつとめ(勤行(ごんぎょう))として親しまれてきました。

 

「あなたの家は何宗ですか」とお尋ねすると、「私の家は何宗か分かりません」という方がおられます。暫(しばら)くして、「私の家は何宗か知りませんが、おつとめは帰命無量寿如来(きみょうむりょうじゅにょらい)です」と、返事がかえってきます。自分の家が何宗かは知らなくても、帰命無量寿如来という言葉は、幼い頃から耳にしてきました。それほど、家庭の中で朝夕おつとめがなされ、お内仏(ないぶつ=寺院で庫裏に安置した仏)の前でつとめられてきたのが、「正信偈」であります。

 

「正信偈」は七言・百二十句の偈頌(げじゅ=仏教の真理を漢詩の形で述べたもの)であらわされ、最初の二句が、帰命無量寿如来南無不可思議光

 

であります。帰命とは「命に帰る」ということと、「命に帰れ」という二つの意味があります。命とは「無量寿のいのち」であります。私たちはいのちというと、生命としての肉体的いのちを考えま す。もちろん、肉体のいのちは尊いけれども必ず限りがあり、最後は終わってゆかなければなりません。今、無量寿と示されたいのちは、永遠に尽きることのない「阿弥陀のいのち」です。ほとけは永遠のいのちを、我がいのちとして私たち衆生に与えてくださるのであります。有限なるいのちを生きる私たちに阿弥陀なる無限のいのちを知らしめんと、あらわれたほとけが阿弥陀如来なのです。

 

法語の二句は、いずれも南無阿弥陀仏という念仏の限りないはたらきを、寿命と光明の徳であらわされたほとけの名であります。南無阿弥陀仏とは、私という人間が根底から支えられている「まこと」の法を一言であらわされたことばです。そのことばが、私たちにいただかれる道を讃(たた)えあらわしたのが「正信偈」であります。

 

妙好人の一人に「田原のお薗さん」という方がおられました。三河の赤羽御坊(ごぼう)に泊まりがけで聴聞(ちょうもん=説教・法話などを聴くこと)に出かけた折、ある晩、急にお腹の調子をこわし、慌ててお手洗いをさがしましたが、あたりは真っ暗闇で何も見えません。隣りの人の足や頭にぶつかって、まわりは大騒ぎとなりました。別院の世話方が騒ぎを聞きつけ、あかりをもって部屋に来ると、お薗さんは壁にへばりついて慌(あわ)てふためいていました。同行(どうぎょう=相伴って真仏に参詣する人々)がお薗さんに、「お薗さん、何をやっているのですか」と尋ねると、お薗さんは、

 

あー、暗いところにこそ、 光はご入り用であったわいの-。

ナムアミダブツ、ナムアミダブツ。

 

と、日頃の聴聞をあらためて、味わわれました。

 

「正信偈」は、煩悩無明(ぼんのうむみょう=衆生の心身をわずらわし悩ませる一切の妄念)の闇を照らすきわみなきひかりであり、この私を永遠のいのちに生かしめたいという阿弥陀ほとけのいのちのメッセージでありましょう。

伊奈祐諦(いな ゆうたい)

1946年生まれ。愛知県在住。岡崎教区安樂寺住職。

 

東本願寺出版(大谷派)発行『今日のことば』より転載

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(※)『教行信証』:正式名称は『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)』という。浄土真宗の教義が整然と示されており、通称「本典(ほんでん)」とも呼ばれる。全六巻(教・行・信・証・真仏土・化身土)からなり、浄土の真実を明らかにしようと試みている。親鸞聖人は生涯をかけてこれに補訂を続けられた。

 

◎あけましておめでとうございます。昨年中はなにかとお世話になりありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。寺院関係の方々からいただきます年賀状の中に「謹賀新年」「迎春」等々、一般的な新年の挨拶のほかに「光寿無量」ということばを見ることが多くなってきました。このことばがまさに今回の法語「ひかりといのちきわみなき」の部分をあらわしているのです。今年度の法語カレンダーは『和訳正信偈』の中から精選したお言葉を収録されたということです。一年を通じて日々味わいたいと思います。合掌